材料の選択

(1)木材の特徴と性質、種類
A.木材の組織を調べる
(a)木材の幹の横に切断した面を観察すると
いくつもの年輪があり中心部に色の濃い部分がある。
釘などで押してみると年輪の上と年輪の間では、年輪の上の方がかたい。
ルーペなどで板目を見ると管状になった繊維が見え、こぐち面を見ると管状の穴が見える。
(b)木材の木表面を観察すると規則的な模様がある。
(c)木材の木裏面を観察すると不規則な模様がある。

木表と木裏、もととすえの見分け方
生徒は、幹を断面にしたときの各部分の名称については比較的すぐおぼえるが、実際の板が与えられたとき、その木表や木裏およびもととすえを的確に指摘できる生徒は少ない。そこで、それらの簡単な見分け方を紹介しておこう。
まず、はじめに木表と木裏のことでは、木表は木裏より赤味の部分が少なく、木目は木表のほうがやや堅く、削ると表面につやがあってきれいである。一方、もととすえでは、(1)赤味はもとに多く、すえに少ない。(2)年輪は、すえになるほど細くなり。丸味が多くなる。(3)木表と木裏をつきぬけている節を見て、上向きになっているほうがすえになる。(4)木目を見て、板目の山形の先のほうが一般的にはすえになる。(5)木表面を削ってならい目の方向がもとである。板を縦に使う場合は、もとを下にし、すえを上にして使う。すると、木目の山形が自然に見えて、外観もよくなり、じょうぶな構造にすることができる。これを逆にすると、不自然で不安定な感じになってしまう。
東京書籍「技術のひみつ」

B.木材の性質について調べる
木材各部のそり方  木材の性質
木材を乾燥させると、水分を放出して収縮する。また、水分を吸収すると膨張する性質がある。 木材の膨張する割合は、方向によって異なる。このため、木材は変形したり、割れたりすることがある。
木材の強さ
木材は繊維が一方向に向かって並んでいるので、方向によって強さが大きく異なる。
木材には密度の大きい木材ほど脆い傾向がある。

構造図
 
曲げに対しての強さ
強い    ⇔    弱い
 
引っ張りに対しての強さ
 強い  ⇔  弱い

C.木材の種類について調べる
木材には、針葉樹材と広葉樹材とがある。
針葉樹材は、一般に幹がまっすぐで、材質は比較的軽くて強いので、おもに建築材として利用されている。
広葉樹材は、材質が一般に重くてかたく、色や模様が美しいので、家具などに利用されている。
重い木材ほど強く、加工しにくくなる傾向があります。
 
  名 称 写 真 特 徴 用途

すぎ
木目が通り、比較的軽くやわらかい。
乾燥すると堅くなる、という性質を持っているので、昔から寺などの建材として重宝された。
建築材
家具材
あかまつ
赤松
木目はおおむね通りであるが、きめが荒く、樹脂分は多い。
針葉樹の中ではもっとも重くて堅く、水中での耐久性は高い。
年輪の境ははっきりしていて美しく、老木の板目には目立ったとい木目がでて、銘木として珍重される。
建築材
家具材
からまつ
唐松

木目は通り、重くて堅い、きめは荒く、材に小節がでやすい。
樹脂分が強くて水中での耐久性が高いので、湿気の多いところや、杭などに使用されてきた。
建築材
家具材
ひば
檜葉
木目は通りであるが、多少ねじれのでることがある。
きめは細かく光沢があるが割れやすい。
軽軟な材で加工性は良く表面仕上げな
建築材
家具材
ひのき
木目が通り光沢がある。くさりにくくきめ細かい。また、耐久性に優れる。
おけなどに利用されてきたほか、「ひのき風呂」という言葉があるくらい、風呂桶には最高の材である。
建築材
家具材
アガチス 南洋杉科の針葉樹、年輪や辺心材が明らかではない。桃色を帯びた淡灰褐色〜淡黄褐色などを示しかなり変動がある。 建築材
家具材
合板材




けやき
辺材と心材の区分が明瞭、木目も明瞭。
やや重くて堅い、狂いが落ちつくまでかなりの乾燥時間を要するが、広葉樹の中で特に優良な木材である。
建築材
家具材
かつら
均質でくるいが出にくい。乾燥が進むと堅くなる。
これらの性質を生かして、木版の材として、また、将棋盤の材として使われた。
家具材
器具材
せん
比較的加工しやすい。はだ目はあらい。
乾燥しても「加工しやすい=柔らかい」ので材の保存性は低い。 下駄用、合板材として用いる。
器具材
合板材
きり
はだ目があらく、軽くて柔らかい。
光沢があって美しく、難燃性で、昔から調度類に使用されてきた。火事になっても、中に入れておいたものが焼けなかったので、特にたんすでは桐は最高の材とされた。
家具材
ラワン 木目は見えにくい。加工は容易だが、木目が通らないのでけずりにくい。「ラワン合板」と呼ばれるように、合板の材料として知られる、代表的な輸入材である。 建築材
合板材

木材を乾燥させてみよう
乾燥していない木材をうすく切り、電子レンジで2、3分乾燥させると、どのように変形するか調べることができる。

 

(2)金属の特徴と性質、種類
A.金属の特徴
どんな特徴をいかして、どんな用途に使用されているか。
金属は常温では固体で結晶をつくり、均質で、金属特有の光沢を持っている。
歯車などのようにかたく、外からの力に対して強く、燃えにくい。
金属は、曲げたりのばしたり、溶かしたり、けずったりしていろいろな形に加工しやすい。
金属は、電線などのように電気を通しやすく、重みによるしなりに強い。
鍋やフライパンなどは熱に強く、熱を伝えやすいなど、木材や石などにない特徴を持っている。
金属は金槌などのようにかたく、重い。

B.金属の性質
針金などを折り曲げたときの変形について
針金などを折り曲げると、塑性変形して、曲げた外側は伸び、内側は縮む。しかし、全体の長さはかわらない。
塑性変形を利用した加工例には
折り曲げ加工、圧縮加工、転造加工など

(1) 金属をたたいたり、おしつぶしたりすると、うす板や箔に加工ができる。このような性質を展性という。
(2) 金属の線などを引っ張ると、引きのばされて細く長くなる。このような性質を延性という。

金属が高温で溶ける性質の使用例には
型に流し込む→(製品名)鋳物  (鉄びん、風鈴、エンジン)
接合に使う→(作業名)はんだづけ 溶接{電気溶接(アーク、抵抗)、ガス溶接}など
温度の制御→(部品名)温度ヒューズ(アイロン、電気こたつ)  配線用ヒューズなど

硬鋼や工具鋼の熱処理については
焼き入れ ・・・・ 高温に加熱してから水や油につけて、常温までに急冷する。 かたくなるが、もろくなる。
焼きもどし ・・・ 焼き入れ後の鋼を、焼き入れ温度より低い温度に加熱し、油や空気中で冷やす。 かたく、しかも粘り強くなる。
焼きなまし・・・ 適切な温度に加熱してから、炉の中でゆっくりと冷やす。 やわらかくなる。

C.金属の種類
材料の種類 性質・特徴 用途例
なんこう
軟鋼
炭素含有量が0.3%以下の鋼。
やわらかく、加工しやすい。
亜鉛鉄板、くぎ、鉄筋、針金
こうこう
硬鋼
炭素含有量が0.3〜0.5%の鋼。
じょうぶで、かたい。
機械の部品、ワイヤロープ
たんそこうぐこう
炭素工具鋼
炭素含有量が0.5〜1.5%の鋼。非常にかたく、強い。
用途にあるように、「硬くて強い必要があるとき」に使う。
やすり、ドリル、バイト
ちゅうてつ
鋳鉄
炭素含有量が2.1%以上の鉄。とけやすく、耐衝撃性に劣る。
鋳物にしか使わない材料である。(鋳物用の鉄=鋳鉄)
風鈴、鉄びん、万力
あえんてっぱん
亜鉛鉄板
軟鋼板に亜鉛めっきをして、さびにくくしたもの。
やや薄青色になる。
屋根、ばけつ
ステンレス鋼
鋼にクロム、ニッケルを加えた合金。さびにくい、加工はしにくい。非磁性のものもある。 食器、流し台、ふろおけ
おうどう
黄銅
鋼と亜鉛の合金。光沢があり、さびにくい。加工しやすい。
別名真鍮(しんちゅう)。10円玉は黄銅。
装飾品、管楽器、ドアのとって
アルミニウム
とその合金
やわらかく軽い。加工しやすいが酸や塩分に弱い。合金にすると耐食性や強度が増す。ジュラルミンはアルミニウムの合金。
1円玉はアルミニウム。
サッシ、リベット、アルミ箔

D.他材料との比較
鉄、アルミニウム、銅、木材の性質の比較
  引っ張り強さ かたさ 重さ 熱の伝わりやすさ 電流の通しやすさ




銅、アルミニウム アルミニウム アルミニウム
  アルミニウム アルミニウム
木材 木材 木材 木材 木材

 

(3)プラスチックの特徴と性質、種類
石油などを化学合成してつくり出した材料で、種類も多数にわたりますが、大きく分類すれば加熱すれば溶融、冷却すれば固化と軟化を繰り返すことができる熱可塑性プラスチックと、熱や光などで化学反応によって、 再び熱を加えても溶融しない熱硬化性プラスチックがあり、プラスチックは種類により加熱して曲げ加工したり、液体を成型したりすることができます。

特徴
透明のものが多い。
軽い。
さわった感じやや冷たく、すべすべしている。
光や熱で変質・変形する。
加工のしやすさは切りにくいが、熱を加えて曲げることができる。
燃えにくいが燃えるとくさいにおいがでる。
くさらない。

プラスチックの種類を細かく分けて行くと下記のようなものがある。

プラスチックの特徴と用途
種 類 性質・特徴 用 途
熱可塑性 ABS樹脂 うすい黄色。成形しやすく、じょうぶである。熱や寒さに強い。 電気製品の外装、スポーツ用品など。
アクリル樹脂 透明である。気候の変化や紫外線などに強い。 光学レンズ、照明器具、光ファイバなど。
ポリエチレン 成型しやすく、じょうぶで、比較的、薬品に強い。安価である。 ラミネート、各種の容器、産業用フィルムなど。
ポリスチレン
フォーム
(発泡スチロール)
ポリスチレンを発泡させたもの。発泡倍率が大きいため、安価である。 断熱材、包装材
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリラン、ポリ酢酸ビニル、ポリブニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニル ブチラール、AS樹脂、 メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、セルロイド
ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、飽和ポリエステル
熱硬化性 エポキシ樹脂 湿気や熱に強い。硬化剤を加えると、いろいろな材料に対し接着力をもつ。 塗料、接着剤、IC、プリント基板など。
フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、 不飽和ポリエステル、ジアリンフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン

木材、金属、プラスチックを比べてみる
■比重の比較(同じ重さの、異なる物質の体積比較−代表的なもの)
 ×8は、「それだけで8個分ある」という意味。
       
バルサ ひのき アガチス
0.12〜0.25 0.38 0.41 0.45
       
エポキシ樹脂 ポリカーボネート アクリル樹脂
0.8 1.0 1.20 1.20
       
アルミニウム
2.7 7.9 8.9 19.3

備考
特にバルサの軽さが目を引く。バルサのでも比重が0.25のものがあるが、それでも杉と比較しても非常に軽い。これでは、建築物はおろか、本立てにも使えない。
そのバルサを別格にすると、木材には「木材らしい重さ」、同様にプラスチックは「プラスチックらしい重さ」があることに気がつくが、金属には「金属らしい重さ」というものは存在しない。
また、比重と「手に触れたときの冷たさ(温かさ)」も比較するとよいだろう。



■比重の比較表
 
素材名称
比重
(大きさ)
*1
備考
  バルサ 0.12〜0.25
*2
8.33
*1

大きさ
ここでは、単位重量あたりの大きさを指す。例えば、同じ1kgなら、バルサ材は水の8.33倍の大きさになる。
計算式は1÷比重。
これをみると、金がものすごく重いことがわかる。
「インゴッド」を片手で持ち上げるなんて、普通無理だ。

   
*2 ここでは比重0.12として計算してある。
   
*3 ABS樹脂
アクリロニトリルブタジェンスチレンが正式名称。
丈夫で耐衝撃性に強い。
   
*4 ステンレス
ここではSUS304で算出している。
ステンレスには他に「SUS303」がよく使われている。
  0.38 2.63
  ひのき 0.41 2.43
  アガチス 0.45 2.22
  エポキシ樹脂 0.8 1.25
  ポリプロピレン 0.9 1.10
  1.0 1.0
  ABS樹脂*3 1.0 0.980
  ポリカーボネート 1.2 0.833
  アクリル 1.2 0.833
  フェノール樹脂 1.3 0.769
  アルミニウム 2.7 0.37
  チタン 5.5 0.18
  亜鉛 7.1 0.14
  7.9 0.13
  ステンレス*4 7.9 0.13
  8.9 0.11
  10.5 0.10
  11.3 0.088
  19.3 0.052

 

(4)新素材について
特殊な性質を持つ新しい金属素材には、ごく低温で抵抗がゼロになり、強い磁界を生み出しリニアモーターカーなどに利用されている超伝導材料、水素を吸収貯蔵するができ、水素自動車の燃料やニッケル水素乾電池の材料となる水素吸蔵合金や、形を変化させても加熱するなどでもとの形にもどる性質をもつ形状記憶合金、2種類以上の材料を組み合わせもとの材料にないすぐれた性質をもたせた複合材料などがありこれらの素材の開発によって、これまではできなかった製品の製作を可能にしました。

  用語解説 
超伝導【superconductivity
ある種の金属あるいは合金の電気抵抗が、きわめて低い温度でゼロになる現象。1911年、カマーリン・オネスが水銀について発見した。33年には、超伝導体が示すもうひとつの重要な性質、すなわち超伝導体中には磁場が侵入しないというマイスナー効果が発見された。しかし磁場があまり高いと、超伝導状態が壊れてしまう。この磁場を臨界磁場とよぶ。ニオブ‐チタン合金は20〜30万キロガウスという高い臨界磁場をもち、超伝導電磁石などに利用されている。温度を下げていったとき超伝導があらわれる温度、すなわち遷移温度は水銀の場合4.2Kである。このような低い遷移温度をもつ従来の超伝導材料に対して、最近、常温に近い高い遷移温度をもつ酸化物超伝導体が発見されてさかんに研究が行われており、実用化の段階も近づきつつある。
小学館 『データパル9年分 1991〜1999』
水素貯蔵合金metallic alloys for hydrogen storage】
輸送したり貯蔵したりするのがむずかしい水素を安全かつ効率的に貯蔵できる特性をもつ合金。チタン系金属、マグネシウム系金属、レアアース、などの金属類を配合、溶解してつくる。金属・ガス反応によって、冷却または加圧すると水素を吸収し、逆に加熱、減圧すると水素を吐き出す性質がある。しかし、常温、空気中ではその特性が失われやすいのが難点といわれる。最近、パソコンや携帯電話に使うニッケル‐水素2次電池の電極向けに需要が急増。93年の年間需要約1000トンが94年は2000トンをこしたと推定される。94年は三井金属、日本重化学工業、中央電気工業などの各社が生産能力増強に動いた。水素貯蔵合金は将来、冷暖房システムへの応用などが期待されている。ニューサンシャイン計画でも、水素を貯蔵、輸送する手段として注目されている。
小学館 『データパル9年分 1991〜1999』
形状記憶合金shape memory alloys】
温度変化によって変形させても、一定の温度以上に加熱するともとの形状に戻る性質のある合金。ニッケル・チタン系の合金と銅系の合金がある。銅系はニッケル・チタン系の10分の1と価格は安いが、何万回反復利用しても記憶が衰えないという性能面ではニッケル系が勝る。玩具や家電製品のブレーカーなどに使われている。人工衛星のアンテナなど航空宇宙分野や、腎臓(じんぞう)ポンプ、接骨材料など生体材料としての利用が本命視されている。
小学館 『データパル9年分 1991〜1999』
複合材料
主な複合材料の構造
複合材料とは、2つ以上の素材を組み合わせて作り上げたもので、もとの材料よりも優れた性質をもたせたものです。
身近な例として
ゴムとコードを合体したタイヤ
ガラス繊維により強化されたプラスチック…FRP
自動車を始め各種動力機械の高性能化、省エネルギー化のため軽くて丈夫な…ウイスカー強化アルミニウム
洗濯機や自動車の騒音減少などに利用される、鋼板を接着樹脂フィルムにより貼り合わせた…制振鋼板
などがある。

 

(5)材料の性質比較
木材、鉄、アルミニウム、プラスチックの性質の比較表  
  木材の特徴 金属の特徴
(鉄鋼)
アルミニウムの
特 徴
プラスチックの特徴
(アクリル板)
外 観
重量感
・木目が美しい。
・軽い。
・断面は光沢がある。
・重い。
・光沢がある。
・軽い。
・内部が見える。
・軽い。
さわった
感じ
・体温になじむ。
・繊維方向は、
 すべすべしている。
・冷たい。
・かたくてすべすべ
 している。
・冷たい。
・すべすべしている。
・やや冷たい。
・すべすべしている。
熱・光・音 ・光、音の反射が小。
・熱が伝わりにくい。
・光、音の反射が大。
・熱が伝わる。
・光の反射が大。
・熱が伝わる。
・光で変質する。
・熱で変形する。
加工 ・切りやすい。
・曲げにくい。
・切りにくい。
・うすいと曲げ
 やすい。
・切りにくい。
・曲げやすい。
・切りにくい。
・熱を加えて
 曲げられる。
その他 ・燃えるがにおいは
 あまり出ない。
・くさる。
・燃えない。
・さびる。
・燃えない。
・さびない。
・燃えにくく、くさい
 においが出る。
・くさらない。

設計の進め方では以上の材料の性質を考慮の上、適当な材料の選択を行いながら作るものを構想しましょう。

 

(6)環境にやさしい素材を使おう

現在の産業界ではものづくりをするときに、どういう素材を使ってつくれば地球環境に影響の少ない製品ができるかということが検討されるようになりました。これからますますこのようなことは企業にとって必須になっていくものと思われます。
この加工技術を学ぶ機会に、そうした一連の検討の行程を経験することはとても意味のあることです。
さて、まず最初にそもそも環境にやさしいとはどういう基準で決められるのでしょうか?まずその区分は大まかにいうと、


1. 製造時やリサイクル時に使うエネルギーが小さい… 残り少ない石油などの資源をあまり使わない。
   
2. 再利用しやすい… 再生に異常に高いコストや多くのエネルギーがかからない。また、手間がかかりすぎないことが重要。
   
3. 環境に悪い物質を出さない(主に燃焼時)… ダイオキシンや健康に害のある物質を出さない。

以上の基準を元に木材、金属、プラスチックのうちどれが環境にやさしいかを考えてみましょう。



木材

利点
切断だけですむため、製造エネルギーが小さい。再生時に必要なエネルギーもほかの材料に比較すると小さい。木材を燃やさない限り、内部に二酸化炭素を吸収しているため、長期使用すればするほど、伐採した後の植林などと併せて環境負荷が減少する。
製材所などで出る端材などは、製紙用パルプ材やパーティクルボード、集成材として再生される。

問題点
燃やすとCO2が出る。木材が製品になった場合、それがリサイクルされる確率はきわめて低く、粗大ゴミや燃えるゴミとして燃やされる。板材は通常何も有害物質を出さないが、集成材などに使用する接着剤からホルムアルデヒドが放散されて、アレルギー反応が出る人もいる。


金属

利点
再利用のシステムが進んでいるため非常にリサイクルしやすい。アルミ缶やスチール缶は資源ゴミとして回収され、リサイクルは原料から製造するよりもエネルギーが少量ですむことが多い。

問題点
製造時に使うエネルギーは大量の熱を必要とするため、消費するエネルギーの量が大量でかつ多くのCO2を排出する。リサイクル時もかなり省力化できるものが多いが、木材に比べると多くのエネルギーを要する(アルミニウムは通常の1/3であるがそれでも木材の製造の十倍のエネルギーを使う)。リサイクルにコストがかかりすぎるのも難点である。
これだけアルミ缶がリサイクルされていても、いまだ海外からボーキサイトを輸入して、大量の燃料を使ってアルミニウムが製造されるのはコストがかかることが原因だとされている。また、ボーキサイトがまだまだ豊富にある材料であることも一因といえる。
アルミ缶やスチール缶など以外の金属はゴミとして一般家庭から出された場合、埋め立てられることが多く、この場合リサイクルはできない。


プラスチック

利点
ペットボトルについては資源ゴミとして回収されやすい。ペットボトルや繊維として再生されている。塩化ビニル系以外のプラスチックは燃焼させてもダイオキシンを発生しない。燃焼のエネルギーを熱回収といって、その熱を別の用途に利用するなどの再利用が進んでいる。

問題点
まず原料の石油があと40年分しかない。これも製造時に利用するエネルギーは大きく、また、リサイクルに使うエネルギー(石油)は製造時の3.7倍必要になるといわれる(ペットボトル)。
再利用の方法については、プラスチックは多様な種類があり、回収の際に混入している場合リサイクルは困難であり、そこで熱回収して再利用されているにすぎない。燃焼時に塩化ビニル系のプラスチックはダイオキシンを発生させる。



以上から環境にやさしい素材は木材ということになりますが、プラスチックや金属を利用する場合でも、上記の基準や各材質の説明などをよく読み、材料を適材適所に配することを心がけなければなりません。


注) CO2を排出すると空気中の二酸化炭素を増やし、地球温暖化につながる可能性があります。
   
注) 「ダイオキシンを出す」とはこの場合、大量に出すことをいいます。実際にはどんなものを燃やしても微量なダイオキシンは出ます。

プラスチックのリサイクル率
プラスチックはPETボトルや食品ラップなどの容器包装のように使用後すぐに廃棄されるものと、家電製品や自動車などの耐久消費財の部品として利用され、生産と廃棄との間に長い時間的なギャップがあるものなど、様々な形態で利用されています。そのため、生産量に対するリサイクル量を短い時間で比較することはたいへん難しくなっています。平成9年には、プラスチックの廃棄物の総排出量に対して、埋め立て処理が約34%、焼却処理が53%、溶融などにより再度プラスチックとして再生紙利用する量が12%と推計されています。

ダイオキシンとは
ダイオキシンとはポリ塩化ジペンゾダイオキシンの略称です。ベトナム戦争で用いられた枯れ葉剤にも大量のダイオキシンが含まれていました。大変毒性が強く発ガン性、催奇性を持っており、皮膚や内臓へも障害をもたらします。自然界には存在しません。

ダイオキシンはどこで発生するか
国内のダイオキシン排出量の約90%が廃棄物焼却炉でゴミ焼却時に発生します。

ダイオキシンはどうして発生するか
不完全燃焼したり焼却温度が低いと発生しやすくなります。国内の焼却施設は、高温で焼却できない焼却炉が多いのが実態です。ダイオキシンは何を燃やしても微量に発生しますが、特に塩素系のものを燃焼させると大量に発生します。


代表的なプラスチック素材

名称 商品例 主な構成元素
塩化ビニル(PVC) 卵パック、ラップなど 炭素・水素・塩素
ポリエチレン ロープ、ラップなど 炭素・水素
ポリプロピレン カップ容器など 炭素・水素
ポリスチレン スーパーのトレイなど 炭素・水素
ABS樹脂 ストラップマスコット、目覚まし時計など 炭素・水素

燃焼させるとダイオキシンを発生しやすい塩化ビニル製品は極力さけましょう。再生プラスチックを使った再生品化例として下記があります。


略名称 名称 再製品華麗
再生PET材 再生ポリエチレンテレフタレート材 回収ペットボトル
再生PP材 再生ポリプロピレン材 使い古された食品運搬用コンテナ、
回収バッテリーケースなど
再生PC材 再生ポリカーボネート材 コンパクトディスク端材など
再生PS材 再生ポリスチレン材 発泡スチロールのケース、CDケースなど
再生POM材 再生ポリアセタール材 カセットテープのリールなど
再生ABS材 再生アクリロニトリル・ブタジェン・スチレン材 家庭用ゲーム機端材など
生分解樹脂 土に返り、燃やしても燃焼カロリーが低く、有毒ガスを発生しない

  ダイオキシンはわたしたちの体内にどうやって入ってくるのか
 
  焼却炉で発生したダイオキシン→大気→雨水など→地上→農作物・魚介類→人体

ポリ塩化ビニル(PVC)
塩ビ、塩化ビニル樹脂に同じ、英名polyvinyl chlordeの頭文字を取ってPVCと呼ばれる。日用品や玩具、建設材料など多種多様な製品や工業材料として使用されてきたが、塩素を多く含んでいるため、焼却処理に伴うダイオキシン類の主要発生源とされる。
90年代に入り消費者や市民団体による不買運動が起こるなど社会問題化し、商品への使用を控えるメーカーなどが急増している。また、ポリ塩化ビニルを製品化するときに可塑剤として用いるフタル酸エステルは環境ホルモン物質であるとされ、厚生省(当時)は2000年6月、食品製造時の塩ビ製手袋の使用を避けるよう事業者に通知した。

有機塩素化合物
塩素を構成原子の一つとして含む有機化合物のこと。大半が人工的に合成されたもので、自然界にはほとんど存在しない。熱に強く、生物への毒性が高いなどの特徴から、絶縁油や殺虫剤として利用された。また、塩化ビニルは軽量で成形が容易なことから、わたしたちの身の回りには便利で安い多くの塩化ビニル製品がある。こうした利便性をもたらした反面、自然環境や生態系、人体への毒性が高いことが問題になっており、対策が進んでいる。また、オゾン層を破壊するフロンもこの一種に含まれる。製造が禁止されたPCBやダイオキシン類、トリクロロエチレンなどがある。


環境負荷の少ない木材のカスケード利用

 

(7)製品に適した材料の選択
フィールドワークで調査した製品にはどのような材料が使い分けられていたか考えてみよう。

(6)までの学習をもとに使用目的にあった機能・構造を満たす材料を選択しましょう。

■選択の基準

・材料の価格
・加工しやすさ
・必要な丈夫さがあるか
・入手しやすい材料か
・外観が目的に合っているか(美しさ、など)
・耐久性(さびにくさ、くさらない、など)
・重さ
・リサイクルがしやすい材料か

材料の選択検討
「設計構想シート」の「材料の選択検討表」を使って、つくるものの部材を検討しましょう。
 
「設計構想シート」をダウンロードする

 

(8)いろいろな材料を加工してみよう
(1)〜(5)で学んだ材料の特徴や性質を実感するためにいろいろな材料を加工してみよう。

例)
・木材
・アルミ板
・アクリル板
・木質材料
切る、削る、などの加工を経験しておきましょう。